中心極限定理
独立同分布で正の有限分散をもつ標本では、標本数が増えると標本平均の分布が正規分布に近づくという定理です。元のデータ自体が正規分布になるという意味ではありません。
独立同分布で正の有限分散をもつ標本では、標本数が増えると標本平均の分布が正規分布に近づくという定理です。元のデータ自体が正規分布になるという意味ではありません。
中心極限定理(central limit theorem、CLT)は、標本平均などの分布を正規分布で近似する根拠となる定理です。
古典的な中心極限定理では、独立同分布で、共通の平均 と正で有限の分散分散は、データが平均の周りにどれほど散らばっているかを表す統計量です。各データと平均との差(偏差)を二乗して平均し、元データの単位の二乗で表します。 をもつ確率変数試行を行う前の段階では値が定まっておらず、試行を行うと確率分布に従って値が一つ定まる量。慣習として変数本体は大文字、試行後に観測された具体的な値(実現値)は小文字で書き分ける。 について、次の標準化した和の分布が、 の増加とともに標準正規分布 に収束します(筑波大学 OpenCourseWare「Chapter 5 大数の法則と中心極限定理」§5.3)。
この結果から、条件を満たす大きな標本では、標本平均 の標本分布を、平均 、分散 の正規分布で近似できます(NIST「Normal Distribution」)。ここでいう標本分布とは、同じ条件で標本を取り直したときに、標本平均がどのようにばらつくかを表す分布です。定理が述べるのはこの分布の近似であり、母集団母集団は、調査や研究で対象とする人・物・出来事の全体です。どの範囲を母集団とするかは問いに応じて定め、そこから一部を取り出したものを標本と呼びます。の分布や個々の観測値確率変数 X が試行を実行した結果として実際に観測された具体的な数値 x のこと。試行前の「値が定まっていない箱」が X、試行後に箱から出てきた「具体的な数」が x。が正規分布になるという意味ではありません。
古典的な形では、独立同分布と有限分散が条件です。中心極限定理には異なる条件を用いる拡張もあるため、「どんなデータでも標本数を増やせば正規分布になる」とは言えません。また、近似に十分な標本数は元の分布などによって変わり、一律の境界はありません(Penn State STAT 414「The Central Limit Theorem」§27.1)。
仮想例: 待ち時間が独立同分布で有限の分散をもち、右に歪んだ分布に従うと仮定します。利用者から同じ件数の待ち時間を何度も抽出して平均を計算すると、標本数が大きい場合、その標本平均の分布は正規分布で近似しやすくなります。元の待ち時間の分布そのものが正規分布になるわけではありません。
標準化した標本平均などが標準正規分布で十分近似できるときは、両側の に対応する確率を約5%、片側の に対応する確率を約2.5%と見積もれます。これらは標準正規分布の尾確率であり、中心極限定理は条件を満たす標本統計量にその近似を使う根拠になります(Penn State STAT 462「Population Distributions」)。個々の観測値を標準化しただけでは、その値が標準正規分布に従うとは限りません。