利下げ行なき二重価格をCPIが裁く — 政策空白のW33
W33はFOMCも日銀会合もない。主戦場は8/12 CPI→8/13 PPI→8/14小売のインフレ・需要トリプルと、8/10日銀「主な意見」。確率表に利下げの行がないまま株・金・BTCが動いた二重価格を、コアMoMが裁く週だ。
来週(8月10〜14日)にFOMCも日銀政策会合もない。主戦場は7月CPI(8/12)→PPI(8/13)→小売売上(8/14)と、日銀「主な意見」(8/10)だ。政策イベント不在の週は、統計1本あたりの価格インパクトが増えやすい一方で、方向を持続させる触媒も乏しい。
先週の出発点は両立しにくい並びだった。S&P 500は8月7日終値7,757.64で史上最高値、金は週+8.70%、WTIは週−8.96%。一方、CME FedWatch(Investing.com、8/7 17:55 ET)の9/16 FOMCは据え置き56.6% / 利上げ+25bp 43.4%で、掲載の確率表に利下げの行がない。10月は据え置き33.5% + 25bp 52.1% + 50bp 14.5%=利上げ計66.6%、12月まで年内1回以上の利上げは約80%。NFP当日の金利反応は10年4.67%→4.64%(−3bp)・2年4.22%→4.20%(−2bp)にとどまり、「弱い雇用→緩和期待」だけでは金利水準を説明できない。2年金利4.20%はFF上限3.75%を+45bp上回ったままだ。
詳細はスポークへ委ねる。為替は日米金利差と日銀「主な意見」、株式は最高値圏の条件分岐を扱う。本稿は商品・暗号資産・マクロを横串で、来週のシナリオだけを固定する。
| 観測 | 値 | 読み |
|---|---|---|
| S&P 500(8/7) | 7,757.64(週+3.58%) | ATH。NFP当日+0.62%は週次上昇の一部 |
| Nasdaq 100 | 29,722.30(週+5.12%) | テック主導。週初28,274.20が巻き戻し水準 |
| DXY | 99.60(週−0.20%) | ドルは小幅安。NFP反応は99.58 |
| USD/JPY | 157.745(週+0.10% / 月−2.84%) | Yahoo終値。日銀中心相場8/7は158.56(基準差) |
| WTI | 77.08(週−8.96% / 月+4.84% / YTD+34.47%) | 週集中の下落。月次トレンドは消えていない |
| 金 | 4,401.30(週+8.70% / YTD+2.01%) | 値幅最大。経路データはbriefにない |
| 銀 / 銅 | +10.78% / +2.32% | 銀が金を+2.08pt上回る。銅は52週高値圏 |
| BTC | $64,939(週+3.2% / YTD−25.8%) | ETFはIBIT集中。後半2日の流入は前半より弱い |
NFPは−23,000(予想+80,000)、前回57,000→20,000へ下方改定、5〜6月改定は合計−103,000。初回失業保険申請は8/1週199,000と3年ぶり低水準で、解雇の代理変数は締まったまま雇用者数だけが減った。失業率4.1%(前回4.2%)に対し労働参加率は61.4%(−0.1pt、約5年半ぶり低)。ISM製造業は55.6(2022年5月以来)で雇用サブ指数52.8(33か月ぶり拡大域)だが、サービス雇用は47.4と縮小域。量的中心はサービス側にある。
7/29 FOMCは9–3で3.50–3.75%据え置き、反対3名(Hammack / Kashkari / Logan)は全員+25bp利上げ提案で、緩和側の反対票はゼロだった。生産性Q2は+1.4%年率(予想+0.6〜0.7%)、単位労働コストは+1.3%(予想+2.1%)で、コスト増を伴わない成長という「両方正しい」解も残る。株高を「利下げ織り込み」と読むなら、確率表の構成と2年金利の位置の両方に説明責任が残る。
原油側では、EIA週次(7/31週)の4系列合算が−180万バレル(原油+250万、ガソリン−160万、ディーゼル−350万、プロパン+80万)。うちガソリン・ディーゼル計は−510万バレルの取り崩しで、5年平均比はガソリン−7%・ディーゼル−12%。精製所稼働率は96.5%、原油投入1,720万b/d。OPEC+の9月増産は+18.8万b/d(米製油所投入比1.09%)で、WTI週次−8.96%の桁に届かない。クッシング現物は7/31終了週に86.16ドル(前週比−5.58ドル=−6.08%)と、OPEC+決定(8/2)より前の週に下落が始まっている。現物(7/31)とWTI先物(8/7、77.08)は系列も日付も異なるため、両者を直結した連続下落率は出さない。
来週の骨格は、政策金利パスの再評価と、在庫・ETFフローが同時に動かないことだ。CPIが直接更新するのは経路1(確率分布)だけである。原油の在庫実数(経路2)は同日のEIAでも更新されるがCPIとは独立だ。BTCのETFフロー(経路3)は発行体の日次判断で決まり、金には経路データ自体がない。したがって「CPI一発で全アセットが一斉反転」ではなく、経路1が先に動き、経路2・3は時間差で追う非同時性を前提にする。
| 経路 | 対象 | 観測できるデータ | 今週の値幅 | 来週の予測可能性 |
|---|---|---|---|---|
| 1 政策金利パス | 金利・ドル・株 | FedWatch水準、FOMC投票9–3 | 10y −3bp / 2y −2bp / DXY −0.20% | 高(CPIが直接更新) |
| 2 物理と輸送 | 原油・銅 | EIA 4系列合算−180万、稼働率96.5% | WTI −8.96% / 銅 +2.32% | 中(EIAで更新、ホルムズは未定量) |
| 3 単線パッシブ | BTC | Farside日次(IBIT 83.73%) | BTC +3.2% | 中(1社方針で断絶しうる) |
| (欠落) | 金・銀 | CFTC・ETF残高・中銀購入なし | 金 +8.70% / 銀 +10.78% | 低 |
FOMC次回は9/15–16、日銀は9/17–18、8月NFPは9/4、OPEC+は9/6、FOMC7月議事録は8/19。いずれも来週にはない。統計だけが残る週だ。
市場の織り込み(水準): 9/16は据え置き56.6% / 利上げ43.4%。10月利上げ計66.6%、年内1回以上約80%。コンセンサスはヘッドライン+0.2% MoM / +2.8〜2.9% YoY、コア+0.3% MoM / +3.0〜3.1% YoY。6月実績はヘッドライン+3.5% YoY / −0.4% MoM、コア+2.6% YoY / 0.0% MoM。コンセンサス通りならヘッドラインは約−0.65pt減速、コアは約+0.45pt加速する。ヘッドラインYoY低下は前年同月MoMの剥落を含む算術で、コア加速もコンセンサスに入っている。本当の焦点はコアMoMが0.2% / 0.3% / 0.4%のどれかと、WTIの−8.96%が8/3〜8/7の出来事であり7月分CPIにエネルギー押し下げがほとんど入らない時差だ(符号が変わるのは8月分=9月上旬発表)。
以下の%はanalystの主観確率であり、市場価格ではない。
| 分岐 | 条件 | 主観確率 | 想定される反応 |
|---|---|---|---|
| ベース | コア+0.3% MoM / ヘッドライン+0.2% MoM | 45〜50% | 9月利上げ確率は43.4%近辺で膠着。2年は4.20%前後。新規材料不足で週後半は方向を失いやすい。銅は相対的に底堅い |
| 上振れ | コア+0.4% MoM以上、またはヘッドラインYoY 3.1%以上 | 25〜30% | 利上げ確率が再加速。DXY・2年金利上昇。Nasdaq週+5.12%分が巻き戻し対象。金は8.70%の一部返上(全戻しは想定しない)。BTCは買い支えが薄い |
| 下振れ | コア+0.2% MoM以下 | 25% | 据え置き確率上昇。ただし利下げ行が表に出るかは別問題。全面高にはなりにくい。金と長期債が主役、銅と原油は上げにくい |
キーレベル: 9月利上げ確率43.4%(60%超で上振れ確認 / 30%割れで下振れ確認)、2年4.20%、10年4.64%、10y−2y 44bp、S&P 7,757.64、Nasdaq 29,722.30 / 週初28,274.20、DXY 99.60、金4,401.30 / 週初逆算4,049.03、BTC $64,939。同日にEIA週次(23:30 JST)とCisco Q4 FY26決算(引け後、Non-GAAP EPS予想$1.17 / 売上$16.8B)があり、値動きをCPIだけに帰属させない。
前回(7/31週)は4系列合算−180万バレル。見出しの原油+250万が売り材料として消化された一方、製品側は締まっていた。OPEC+9月+18.8万b/dは8/2決定済みで織り込み済み(次回会合9/6)。ホルムズ通行枠組みは未織り込み(通行料はイラン側5〜7% vs オマーン側約3%で係争中)。今回のコンセンサス予想値はbriefにないため、ベースは前回実績からの外挿である。焦点は製品在庫が2週連続で減るかと稼働率96.5%の維持。
| 分岐 | 条件 | 主観確率 | 想定 |
|---|---|---|---|
| ベース | 原油横ばい〜小幅増、製品続落、稼働率95〜97% | 50% | WTI 77〜82のレンジ固め。新規供給ニュースがなければ下落は鈍化 |
| 上振れ | 原油取り崩し、製品続落、またはホルムズ交渉頓挫報道 | 30% | 半値戻し目安80.9(現値77.08と週初84.67の中間)。XLE週−3.44%の一部回復 |
| 下振れ | 原油2週連続大幅積み増し、稼働率低下、またはホルムズ妥結 | 20% | 77割れ。月次リターン+4.84%が消える水準は73.52 |
「需要は崩れていない」の棄却条件は、ガソリンとディーゼルの両方が増加(合計+200万バレル以上)かつ稼働率が94%を下回った場合だ。
7/31会合は8–1でO/N約1.0%据え置き。反対1名(高田審議委員)が約1.25%利上げを提案。7月Outlook Reportは基調的インフレが2%目標を上回るリスクを初めて明示した。票数8–1は結論の分布であって議論の分布ではない。焦点は上方リスクへの同調が少数にとどまるか、多数意見へ浸食しているか。伝達経路は円そのものではなく日米金利差(10年スプレッド1.92%pt、政策金利スプレッド2.75%pt)。
| 分岐 | 条件 | 主観確率 | USD/JPY |
|---|---|---|---|
| ベース | 上方リスク言及が少数 | 55% | 157.7〜158.6レンジ維持 |
| 上振れ(タカ派色) | 複数委員が上方リスクに同調 | 25% | 〜157を試す |
| 下振れ(現状維持色) | 現状維持が濃い | 20% | 160台への戻り警戒。介入疑い水準〜162.8に近づくほど上値は非対称 |
キーレベル: Yahoo 8/7終値157.745 / 日銀中心158.56(レンジ158.22–158.57)/ 7/31中心160.64(そこから8/7まで−1.29%の円高)。
WTI −8.96%は、増産量でも需要崩壊でも説明できない。OPEC+ +18.8万b/dは米製油所投入比1.09%にすぎず、値幅の約1/8の桁だ。4系列合算−180万バレルと製品−510万バレル、稼働率96.5%は実需が回っている側の証拠。クッシング現物の下落が8/2より前に始まっていた順序事実は、OPEC+主因説を棄却する。ホルムズ要因は消去法で残った候補にすぎず、$/bblのプレミアム推計はbriefにない。月次+4.84%(先週を除く3週間+15.16%)で中期の下降トレンドは成立していない。来週の結論は「下落継続には新規の供給ニュースが要る」という条件付きだ。キーレベル: 77.08 / 80.9 / 84.67 / 73.52。ブレント82.27 / 週初90.12 / 月次消失78.02。
金+8.70%は今週最大の値幅だが、brief内で「誰が買ったか」のデータが存在しない唯一の主要資産だ。同週DXYは−0.20%のみ(値幅比43.5倍)、10y −3bp、2y −2bp。S&PはATHでリスクオフではない。金銀比価は70.31→68.99(−1.88%)にとどまり、銀+10.78%が金を上回る。銅+2.32%とISM製造業物価71.1は、工業・インフレ側の値付けと整合する有力候補だが、資金フローの証拠がないため未確定だ。水準はYTD+2.01%(銀YTD−9.58%)で、過熱しているのは水準ではなく速度だ。反転想定は全戻しではなく、5営業日で得た8.70%の部分返上に限定する。キーレベル: 4,401.30 / 週初逆算4,049.03 / 年初4,314.6。銀63.80 / 週初57.59。
4営業日(8/4〜8/7)の現物ETF純流入は合計+$695.2m。うちIBITが+$582.1m=83.73%。直近10営業日+$815.4mのうち直近4日が85.26%を占め、残り6営業日は+$120.2mにすぎない。日次は8/4 +211.5 → 8/5 +244.4 → 8/6 +137.6 → 8/7 +101.7($m)で、後半2日が前半2日を下回った(8/8分は未取得のため減衰トレンドとは書かない)。7/31は−$265.4m。BTC時価総額は約$1,303B(全体$2,296B × ドミナンス56.75%)で、4日フローはその0.0533%。フローと価格の対応は相関にとどめ、因果では書かない。CLARITY Actは8/6に上院で棚上げ(年内フロア投票見送り)。キーレベル: $64,939(8/1 $62,897)。来週IBITシェアが60%を下回る日が2日以上出るか、日次純流入が+$244.4mを上回る日が出るかが「単線」判定の棄却条件だ。