定義
算術平均データを全部足して個数で割った値。全員を等しい重み(n 分の 1)で扱う性質から、1 人の極端な値(外れ値)が結果を大きく動かす。(arithmetic mean)は、データ x1,x2,…,xn に対して次で定義される代表値データの中心的な位置を 1 つの数で要約した量。平均・中央値・最頻値の 3 つが代表的だが、データの形と何を知りたいかに応じて使い分ける必要がある。です。
ここで重要なのは「全員を等しい重み 1/n で扱う」という構造です。xˉ は「エックスバー」と読みます。
性質
- 線形性確率変数の和と定数倍について期待値演算子が素通りする性質。E[aX+b]=aE[X]+b および E[X+Y]=E[X]+E[Y] が独立性を要求せずに成り立つ。: あるデータ点が Δx 増えると、平均は Δx/n だけ動く
- 外れ値他のデータ点から大きく離れた値。平均など順位を見ない指標を強く歪める一方、中央値や順序統計量は外れ値に対してロバスト。に弱い: 1 人の極端な値が結果を大きく動かす(中央値 と対比される)
- 右歪み分布では、平均が中央値より右にずれるのが典型(単峰の連続分布でよく成り立つ経験則で、離散分布や多峰分布では逆転する例外もある)
- L2 最小化点: argminm∑(xi−m)2 がちょうど xˉ になる
視覚的に見る
8 人のバイト時給 (1,000, 1,050, 1,050, 1,100, 1,150, 1,200, 1,300, 4,500) で、H さんだけが 4,500 円に飛び出している分布です。平均 1,544 円は、全 8 人の値をそれぞれ重み 1/8=0.125 で按分したものなので、H さんの 4,500 円が 4,500×0.125=562.5 円ぶん平均を持ち上げています。
8人の時給と平均・中央値
データ数 8·外れ値 1·単位 時給(円)
- 平均
- 1,543.75 円
- 中央値
- 1,125 円
- 人数
- 8 人
データ一覧
- A1,000
- B1,050
- C1,050
- D1,100
- E1,150
- F1,200
- G1,300
- H4,500
横位置は実際の時給です。同じ値や近い値の点は、人数分が見えるよう上下にずらしています。点にフォーカスすると各人の値を確認できます。
横軸は時給(円)で、縦の位置に数量としての意味はありません。近接する点を上下に分け、8人すべてを表示しています。青い点と赤い外れ値の点が各人の時給、赤い破線が平均 1,544 円、青い実線が中央値 1,125 円。右端に離れた点が H さん(4,500 円)で、平均の破線がデータの密集帯から右へ引かれているのが見て取れる。
中央値 1,125 円とのギャップは 419 円。H さんの値が大きくなるほど、このギャップは線形に拡大します。たとえば H が 45,000 円になると平均は約 6,606 円まで跳ね上がりますが、中央値は H の順位(8 番目)が変わらない限り 1,125 円のままです。
実世界での使われ方
算術平均は「総量を頭割りした基準値」を求めたい場面で使われます。
- GDPGDP(国内総生産)は、一定期間に国内で生み出された付加価値の合計を示す指標です。実質GDPの成長率は物価変動を除いた生産の伸びを表しますが、GDPだけで暮らし向きや景気の全体像は判断できません。・1 人あたり所得: 内閣府「国民経済計算(GDP 統計)」では 1 人あたり名目 GDP が算術平均ベースで公表されています。総額を人口で割るので、上下の偏りには感度が高い指標です。
- 消費者物価指数CPIは、消費者が購入する財・サービスの価格の動きを指数で示す統計です。国や機関により指標の範囲や算出方法が異なり、ユーロ圏のHICPと常に同じ意味ではありません。(CPI): 総務省統計局「消費者物価指数」は、品目別の価格指数を加重平均(家計支出ウェイト)で集計する変種です。基準時点 100 のラスパイレス指数で算術平均の応用形。
- ポートフォリオの期待リターン: 各銘柄のリターン ri と保有比率 wi から ∑wiri で期待リターンを計算します。これは加重平均で、wi=1/n なら普通の算術平均と同じ構造。
- 試験の合計点: 高校の中間試験 5 教科の合計点を 5 で割った 平均点は典型的な算術平均。各教科が等しい重みで扱われる前提を共有しています。
公的統計が「平均と中央値の両方を報告する」場合、両者の差そのものが分布の歪みの強度を測ります。
深掘り
期待値確率変数が取りうる各値に、その確率を重みとして掛けて足し合わせた値。長期的に試行を繰り返したときの観測平均の収束先を表す。離散型では値と確率の積の総和、連続型では密度関数による積分で定義される。・ノルム最小化・3種の平均の関係は L2 以上の視点です。算術平均の定義と外れ値への弱さだけなら不要です。
▶計算発展(L2以上): 期待値・L²最小化・算術/幾何/調和
期待値としての算術平均
確率変数 X の 期待値 E[X] は連続版・離散版いずれの場合も「重みつき平均」の概念です。n 個のサンプル x1,…,xn から計算する算術平均 xˉ は、経験分布(各点に確率 1/n を置いた離散分布)の期待値そのもの。n→∞ で母平均 μ=E[X] に収束する(大数の法則)という関係が、推測統計の基礎を支えています。
L2 ノルム最小化としての特徴づけ
算術平均は「二乗誤差の和を最小にする 1 点」として等価に定義できます。
この性質は最小二乗法(OLS 回帰、PCA、リッジ回帰など)の基礎になっています。線形回帰の解は「平均が定数項を、共分散が傾きを決める」構造をもち、すべて二乗誤差最小化から導かれます。
算術・幾何・調和平均
平均には他にも幾何平均 (∏xi)1/n、調和平均 n/∑(1/xi) があり、すべて 正の値に対し 次の不等式(算術-幾何-調和平均不等式)を満たします。
等号成立は全 xi が等しいときのみ。複利・成長率の平均 には幾何平均、速度・密度の平均 には調和平均が目的に合います。「平均」と一括りにしないことが、応用での誤用を防ぎます。
関連する用語
- 中央値 — L1 最小化点。算術平均(L2 最小化)と対をなす
- 最頻値 — 最も頻度の高い値
- 中心傾向 — 平均・中央値・最頻値を包む上位概念
- 外れ値 — 算術平均が最も弱い対象
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