定義
最頻値(mode)は、データの中で 最も多く出現する値 です。記号は 。離散データでは度数(出現回数)が最大の値、連続データでは密度関数 が最大の点として定義されます。
性質
- 離散・カテゴリデータで強い: 「血液型で一番多いのは A 型」「アンケートの 5 段階評価で最も多い回答は 4」のような場面で代表値として機能する
- 連続データでは弱い: 身長・時給・株価などは各値が 1 回しか出ないケースが多く、最頻値が決まらない・決まっても意味が薄い
- 複数モード: 2 つ以上の値が同頻度で並ぶ「双峰分布」では最頻値が複数になる
- 単調変換には非不変: 中央値は単調増加変換で値の位置が保たれるが、最頻値(密度のピーク)は変換後の密度形状が変わるため位置がずれる。 のように変換すると最頻値の数値が変わるのがその例
視覚的に見る
ある授業の 5 段階評価アンケート(1=とても不満, 5=とても満足)で、回答が以下のような度数分布になったとします。
| 回答 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 度数 | 2 | 5 | 12 | 28 | 18 |
最頻値は回答 4(度数 28)です。中央値も 4 ですが、最頻値は分布のピーク位置そのものを指している点が違います。
横軸は 5 段階の回答、縦軸はその回答を選んだ人数(度数)。棒の高さが度数で、いちばん高い緑の棒(回答 4、28 人)が最頻値。全回答を平均するのではなく、最も多い山をそのまま代表値にする。
このようなカテゴリデータでは「平均 3.7」を出すよりも「最も多い回答は 4」と言ったほうが情報伝達として正確です。順序尺度(1〜5 の順番に意味はあるが、間隔は等しいと言えない)に算術平均を当てることへの違和感は、最頻値で回避できます。
実世界での使われ方
最頻値が代表値として活きる場面は、データが 離散・カテゴリ型 で「個別の値が繰り返し現れる」ケースです。
- 国勢調査: 総務省統計局「国勢調査」では世帯人員数(1 人、2 人、3 人...)の最頻値が報告されます。日本では 2020 年時点で「1 人世帯」が最頻値(38%)で、平均世帯人員 2.27 人との乖離が単独世帯の増加を示す指標になっています。
- クラス分けされた所得階級: 厚労省「賃金構造基本統計調査」の年齢階級別賃金分布では、各階級の度数が報告され、最頻階級が「典型的に多い層」として参照されます。
- マーケティング・顧客分析: 「最も多いユーザー属性」「最も多く購入される SKU」を特定する場面で最頻値が使われます。EC サイトの売れ筋ランキングは順位を最頻値の延長線上で並べたものです。
- 遺伝学: ある集団内で「最も多く出現する対立遺伝子(アレル)」を最頻アレルと呼びます。集団遺伝学の解析で頻度の最大値が直接の関心になります。
連続データに対しては、ヒストグラムや カーネル密度推定(KDE)で「密度のピーク位置」として最頻値を近似する場合がありますが、ビン幅・バンド幅の選び方で位置が変わるため安定した推定量ではありません。
深掘り
中心傾向 3 つの順序関係
連続な単峰の 右歪み 分布(所得・住宅価格など)では、典型的に次の順序が成立します。
最頻値が分布のピーク位置で最も左、中央値が順位の真ん中、平均が右の高値に引きずられて最も右。stats-01 で扱う「6 割以上が平均以下」現象は、この順序関係の直接の帰結です。ただしこの順序は経験則に近く、離散分布や多峰性分布では破れることが Karl Pearson 以降の文献で報告されています(von Hippel 2005)。
連続分布での密度ピーク
連続確率変数 の密度 に対し、最頻値は の局所最大点として定義されます。正規分布 では (中央値・平均と一致)ですが、対数正規分布 では
と 3 つの代表値が綺麗にずれます。対数正規分布は所得・株価・自然現象の規模分布で出てくる重要な分布で、3 つの代表値が一致しない構造を理解する手がかりになります。
サンプル最頻値の不安定性
サンプルから計算する最頻値は、データを少し動かすだけで値が大きく変わることがあります。たとえば では最頻値が 1 と 2 の双峰ですが、新たに と 1 を 1 個追加するだけで最頻値は 1 単独に確定します。平均・中央値が滑らかに動くのに対し、最頻値は離散的に飛ぶ ことが、推測統計で最頻値があまり使われない理由の一つです。
関連する用語
詳しくは
- stats-01: 平均値と中央値の使い分け — 最頻値が「三者対立」として登場する文脈と、本筋から外れる理由