最頻値
データの中で最も多く出現する値。連続データには適用しにくく、カテゴリ・離散値で力を発揮する代表値。
最頻値(mode)は、データの中で 最も多く出現する値 です。記号は 。離散データでは度数(出現回数)が最大の値、連続データでは密度関数 が最大になる点(大域最大点)として定義されます。
ある授業の 5 段階評価アンケート(1=とても不満, 5=とても満足)で、回答が以下のような度数分布になったとします。
| 回答 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 度数 | 2 | 5 | 12 | 28 | 18 |
最頻値は回答 4(度数 28)です。中央値も 4 ですが、最頻値は分布のピーク位置そのものを指している点が違います。
横軸は 5 段階の回答、縦軸はその回答を選んだ人数(度数)。棒の高さが度数で、いちばん高い緑の棒(回答 4、28 人)が最頻値。全回答を平均するのではなく、最も多い山をそのまま代表値にする。
このようなカテゴリデータでは「平均 3.7」を出すよりも「最も多い回答は 4」と言ったほうが情報伝達として正確です。順序尺度(1〜5 の順番に意味はあるが、間隔は等しいと言えない)に算術平均を当てることへの違和感は、最頻値で回避できます。
最頻値が代表値として活きる場面は、データが 離散・カテゴリ型 で「個別の値が繰り返し現れる」ケースです。
連続データに対しては、ヒストグラムや カーネル密度推定(KDE)で「密度のピーク位置」として最頻値を近似する場合がありますが、ビン幅・バンド幅の選び方で位置が変わるため安定した推定量ではありません。
連続な単峰の 右歪み 分布(所得・住宅価格など)では、典型的に次の順序が成立します。
最頻値が分布のピーク位置で最も左、中央値が順位の真ん中、平均が右の高値に引きずられて最も右。stats-01 で扱う「6 割以上が平均以下」現象は、この順序関係の直接の帰結です。ただしこの順序は経験則に近く、離散分布や多峰性分布では破れることが Karl Pearson 以降の文献で報告されています(von Hippel 2005)。
連続確率変数 の密度 に対し、最頻値は の大域最大点です。単峰分布ならこの点が一意に定まります。多峰分布では大域最大点が 1 つに決まっても、それ以外の局所最大点を「第 2 のモード」のように扱う慣習があり、「双峰分布」「多峰分布」という呼び方はこの局所最大点の個数を指しています。正規分布 では (中央値・平均と一致)ですが、対数正規分布 では
と 3 つの代表値が綺麗にずれます。対数正規分布は所得・株価・自然現象の規模分布で出てくる重要な分布で、3 つの代表値が一致しない構造を理解する手がかりになります。
サンプルから計算する最頻値は、データを少し動かすだけで値が大きく変わることがあります。たとえば では最大度数が並ぶため最頻値が 1 と 2 の 2 つになりますが、新たに と 1 を 1 個追加するだけで最頻値は 1 単独に確定します。平均・中央値が滑らかに動くのに対し、最頻値は離散的に飛ぶ ことが、推測統計で最頻値があまり使われない理由の一つです。