中央銀行が将来の政策の見通しを伝えるコミュニケーションです。政策金利政策金利は、中央銀行が金融政策のスタンスを示すために設定・誘導する金利または金利群です。市場金利に働きかける際の基準となり、多くの中央銀行では短期金利が主な手段ですが、対象や運用方法は国・中央銀行によって異なります。の見通しが中心ですが、中央銀行によっては資産買入れの見通しも含みます。
定義
フォワード・ガイダンス(forward guidance)とは、中央銀行が経済見通しに照らして、将来の金融政策がどのように進むと見込まれるかを公に伝えることです。伝えた見通しは市場や家計・企業の期待に作用し、現在の金融環境にも影響し得ます。[S1][S2]
伝え方には、政策変更の条件を示すものや、見通しを定性的に説明するものがあります。条件を期日などで示す「時間依存型」と、物価や雇用など経済の状態で示す「状態依存型」もあります。[S3] そのため、将来の政策を無条件に約束することは必須ではなく、条件付きの見通しもこの用語に含まれます。
SEP・ドットとの関係
FRBの経済見通し(SEPSEPは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者それぞれの経済見通しと、適切と考える政策金利の予測をまとめた資料です。ドットプロットは、そのうち政策金利の見通しを参加者ごとの点で示した図表です。)には、FOMC参加者それぞれが適切と考える政策金利の見通しが含まれます。ドットは参加者ごとの年末や長期の金利判断を示すもので、委員会として合意した金利経路や利上げの約束を表すものではありません。[S4][S5]
たとえば2026年6月16–17日のFOMC会合では、政策金利の目標レンジが3.50〜3.75%に据え置かれました。一方、6月SEPの2026年末の適切なフェデラルファンド金利の中央値データを小さい順に並べたとき真ん中に位置する値。順位だけを見るため、外れ値が何倍に動いても順位が変わらない限り中央値は動かない。は3.8%で、議事要旨も年末の適切な金利を現行レンジより高く判断した参加者が多かったと記録しています。これは年内の利上げ余地を示す材料ですが、FOMCが利上げを決定・約束したという意味ではありません。[S6][S7]
同会合後の会見でWarsh議長は、声明からフォワード・ガイダンスを外し、当時の政策環境には適さないと説明しました。また、一般に廃止すべきとの見方と、その時点では適切でないとの見方の双方が委員会内にあると述べ、今後の検討に言及しました。確認できるのは当面の声明からの削除と今後の検討であり、恒久的な廃止決定ではありません。[S8]
この用語を扱う本編記事
詳しくは
- [S1] 米連邦準備制度理事会(FRB), “What is forward guidance, and how is it used in the Federal Reserve's monetary policy?”(2025年8月22日更新)。定義と期待への影響。
- [S2] 欧州中央銀行(ECB), “Monetary policy glossary,” “forward guidance.” 政策金利や資産買入れを含む範囲。
- [S3] 日本銀行『金融政策の多角的レビュー』「2.先行きの金融政策運営への含意」内「(フォワード・ガイダンス)」、p.66・図表2-4-1。日本語表記と条件の分類。
- [S4] FRB, “Guide to the Summary of Economic Projections,” Table 1・Figure 2の説明。SEPとドットの読み方。
- [S5] Jerome H. Powell, “Speech by Governor Powell on discussion of the paper ‘Language after Liftoff: Fed Communication Away from the Zero Lower Bound,’” 2016年2月26日。ドットとFOMC声明の違いについての発言者個人の説明。
- [S6] FRB, “June 17, 2026: FOMC Projections materials, accessible version,” “Summary of Economic Projections”・Table 1。
- [S7] FOMC, “Minutes of the Federal Open Market Committee, June 16–17, 2026,” “Participants’ Views on Current Conditions and the Economic Outlook”・“Committee Policy Actions.”
- [S8] FRB, “Transcript of Chairman Warsh’s Press Conference,” 2026年6月17日、pp.2, 6。