ファンディングレートとは 無期限先物の受払いと価格差
無期限先物の資金調達率について、買い手と売り手の受払い、現物との価格差を縮める仕組み、その限界を説明します。
無期限先物の資金調達率について、買い手と売り手の受払い、現物との価格差を縮める仕組み、その限界を説明します。
架空の例として、ビットコインを対象とする先物を買い、決済せずに保有しているとします。契約が対象とする数量は1 BTC、評価に使う価格は50,000 USDTです。USDTは米ドルに連動することを目指す暗号資産の単位です。価格の変動による損益とは別に、所定の時点で売り手との間にお金の受払いが生じることがあります。
無期限先物(パーペチュアル)は、満期日がなく、決済しない限りポジションを持ち続けられる先物です。ポジションとは、決済していない取引上の立場を指します。
現物価格は、実際の資産を売買する市場の価格です。無期限先物の取引価格は現物価格と常に一致するわけではありません。Bybitは、自社の無期限契約の価格を現物市場の価格に近づける仕組みとして、資金調達を説明しています。
先物の買い手には、価格が上がると価格変動による利益が出るロングという立場があります。売り手のショートは、価格が下がると価格変動による利益が出る立場です。
資金調達時は、買い手と売り手の保有者間で資金調達料を交換する時点です。その受払額を決める割合を資金調達率、またはファンディングレートと呼びます。資金調達料は売買手数料とは別の受払額です。
矢印は支払う側から受け取る側への向きです。資金調達率が正ならロングがショートに払い、負ならショートがロングに払います。
Bybitの説明では、資金調達時にポジションを保有している場合に受払いが生じます。その時刻より前に完全に決済したポジションには生じません。
先物価格と現物価格の差をベーシスと呼びます。資金調達率はこの価格差そのものではなく、保有者間の受払いに使う割合です。
Bybitの算定では、現物市場を参照する指数価格と、契約の取引水準との隔たりを測るプレミアム指数を使います。契約の取引水準が指数価格に対して高くなると、プレミアム指数は上がる方向に動き、次回の資金調達率を押し上げる要因になります。各時点の指数を平均した値に金利部分を組み合わせ、最後に資金調達率の上限と下限を適用します。金利部分と平均プレミアム指数の差にも、プラスとマイナスの0.05%という制限があります。上限・下限は、算出される率の範囲を制限する役割です。
図の左側は率の算定に入る要素、右側は上下限を適用した後の率です。価格差だけをそのまま支払率にする計算ではありません。
資金調達は、買いと売りの保有費用を変えることで、参加者の取引判断に働きかける仕組みです。
この経路では、参加者の売買とその価格への影響を仮定しています。実際の売買には費用や、価格差を利用した取引が働きにくい制約があり、率にも上下限があるため、価格差が縮まることは保証されません。負の率ではショートからロングへ支払いますが、その後の売買や価格の変化は別に観察する必要があります。
契約数量は保有する契約が対象とする資産の数量です。マーク価格はポジション価値の算定に使う基準価格で、現物の約定価格とは区別します。
Bybitの計算では、ポジション価値は契約数量にマーク価格を掛けた金額です。これは取引のために担保として差し入れる証拠金とは異なります。
1 BTC × 50,000 USDT / BTC = 50,000 USDT
このポジション価値に資金調達率を掛けると、1回の資金調達料が出ます。率を架空の+0.01%とすると、小数では0.0001です。
50,000 USDT × 0.0001 = 5 USDT
資金調達時にロングを保有していれば、ロングが5 USDTを払い、ショートが受け取ります。これは1回の資金調達料であり、価格変動による損益や売買手数料を含みません。
BinanceのBTCUSDTとETHUSDTの無期限先物について、2021年1月1日00:00 UTCから2026年10月28日16:00 UTCまで、8時間間隔で観測された各回の率を月ごとに平均しました。各銘柄6,381件で、2026年10月は観測終期までの部分月です。データの取得日は2026年10月29日です。

横軸は年月、縦軸は各回の資金調達率の月平均です。ゼロ線より上は月平均が正、下は負を表します。2021年2月の月平均は両銘柄とも正でしたが、2026年2月から4月はともに負でした。ETHUSDTでは2022年9月にも負の月平均が見られます。
月平均が負でも、その月のすべての資金調達率が負だったとは限りません。たとえばBTCUSDTの2021年7月は、93回のうち正が51回、負が42回でした。
月平均だけでは市場の状態を読み切れないため、未決済の契約の総量を示す建玉先物建玉(open interest、OI)は、保有する建玉を逆方向の取引で閉じる反対売買や最終決済が済んでいない契約の数量です。ある時点の残高を示し、出来高や買い・売りの偏りとは異なります。も手掛かりになります。建玉が増減しても、それだけでどちらの立場が解消されたかは分かりません。資金調達率は保有費用や市場の混雑を読む手掛かりになりますが、率だけで将来の価格を確定することはできません。
現物を買い、同じ資産を対象とする先物を売る組み合わせをキャッシュ・アンド・キャリーと呼びます。無期限先物を使う場合、正の資金調達率のもとで資金調達時にショートを保有していれば、先物側は資金調達料を受け取ります。率が負に変われば、その時点ではショート側が支払います。
取引コストや金利、現物と先物の価格差も損益に関わります。受取額だけでは、費用を含めた実現損益は決まりません。
清算とは、所定の条件でポジションが強制的に決済されることです。Bybitでは資金調達料が取引のために差し入れた証拠金から差し引かれる場合があります。証拠金の管理方法によっては、清算される価格がマーク価格に近づき、清算のリスクが高まる可能性があります。
率の表示は取引所や契約で異なります。Bybitの資料では、算定に使う金利部分は1日0.03%で、8時間ごとの受払いなら1回0.01%です。これは資金調達率そのものではありません。OKXは2026年6月に計算式を改め、金利部分を0.01%に固定し、受払いの間隔を1・2・4・8時間としました。率を比べるときは、対象の契約と、何時間ごとの受払いに対応する率かをそろえます。
先物の買いと売り、取引に差し入れる証拠金に、保有中の資金調達料が加わります。現物と先物の価格差であるベーシスを調べるときも、その差と資金調達率を別々に読みます。